保有技術と開発品長時間の血液滞留性を有するリポソームは、STEALTH®
リポソームと称され、制癌剤を内封させて発売されています。
これらの
STEALTH®リポソームは、粒径を100 nm付近に調整することによって
癌細胞周辺に集積しやすくなります。癌細胞が作り出す新生血管の細胞壁の隙間(100 nm - 200
nm) から小粒径のリポソームが漏れ出すという、EPRと称される効果によると言われています。
しかしながら、これらはpassive
targetingと呼ばれるように、癌細胞への直接のターゲテイング機能を有するものではありません。
トランスフェリンを用いたがん細胞へのターゲテイング
(Active
Targeting)
当社は制癌剤を内包したリポソーム表面にトランスフェリンを結合させた技術を
プラットホーム技術として確立しました。トランスフェリンはヒトの血液中に190〜320mg/dlの濃度で存在し、
鉄イオンを運搬する役目を担う血漿糖蛋白質であります。当社は血中滞留性を向上させると共に、
癌細胞表面に多く存在するトランスフェリン受容体と容易く結合するトランスフェリンを
リポソーム表面に結合させることで、癌細胞への薬物(制癌剤)の運搬を可能にしました。
癌細胞表面にはきわめて多くのトランスフェリン受容体が存在することが知られており、
薬物運搬のターゲットになると考えられます。下記の図は癌細胞各種と正常細胞各種における
トランスフェリン受容体数を比較したものです。癌細胞にはトランスフェリン受容体が多く存在するため、
リガンドとしてトランスフェリンを用いることで、新規かつ安全なターゲテイング(active
targeting)機能を有する技術が実現できました。 REFERENCE:
Niitsu, Y.,
Kohgo, Y., Nishisato, T., Kondo, H., Kato, J.,
Urushizaki, I.: Tohoku. J. Exp. med.,
153, 239-243 (1987)
当社開発品の癌細胞への取り込みの作用機序
トランスフェリンを結合させたリポソームを癌細胞に接触させると、
リポソームはエンドサイトーシスという機序により癌細胞内部に取り込まれます。
鉄イオンで飽和されたトランスフェリンが細胞表面のトランスフェリン受容体に出会うと、まず受容体との結合が生じ、続いて細胞内部に小胞体として取り込まれます。細胞内部は酸性ですので、トランスフェリンは鉄イオンを遊離させます。その後、役目を終えたトランスフェリン受容体は再び細胞表面に戻り、新たなトランスフェリンを取り込む役目を果たします。
一般に癌細胞は多くの新生血管を作り出しますが、そのために細胞表面にはトランスフェリン受容体が数多く存在することが知られています。以下の図は、通常細胞に比べて癌細胞表面にトランスフェリン受容体が多く存在していることを示したものです。
この様子は下記に示しますように、電子顕微鏡でも観察かつ撮影もされています。
また、トランスフェリンを粒子表面に結合させることによって、癌細胞まで運搬することができます(下記文献参照)
REFERENCE:
H.Iinuma
et al, Int. J. Cancer; 99, 130-137 (2002)
S.
Hu-Lieskovan et al, Cancer Res.; 65: (19),
8984-8982 (2005)
その他関連情報メビオファームの技術をもとに、トランスフェリンを結合させたプレリポソームキット(リポソーム前駆体)を販売しています。
このキットにより、薬物を内包させたリポソームを作製することができ、癌細胞および癌細胞担持小動物などにアプライすることができると同時に、簡易に癌細胞へのターゲテイング機能を調べることが可能になりました。
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